
今回のテーマは「思考の技術」だよ!
今回のテーマは思考の技術です。
世界で最も有名な名探偵シャーロック・ホームズをご存知ですよね。
彼はパイプをくゆらせながら難事件を次々と解決していきますが、実は彼の頭の中で起きていることは魔法でも超能力でもありません。
それは極めて論理的で科学的な観察と推論のプロセスなのです。
私たちが普段何気なく行っている、ものを見る考えるという行為。
これらをホームズのように意識的に制御し、科学的なレベルにまで高めることができれば、世界は全く違った様相を見せるはずです。
霧深きロンドンの街角でホームズが一体何を見て何を考えていたのか。
今日はその脳という屋根裏部屋の秘密に迫りあなたの思考力をアップデートする旅に出かけましょう。
ぜひ最後までお付き合いください。
注意力の選択

まずは根本的な問いから始めましょう。
あなたは普段何に注意を向けていますか。
ホームズはこう言っています。
注意力の選択つまり何に注意を向け何を無視するか。
それは人の生活の内面にとって外面における行動の選択と同等であると。
現代社会において私たちの注意は常に奪い合いの状態にあります。
スマートフォンの通知やSNSのタイムライン広告の数々。
これらに無自覚に反応していると自分の人生の主導権を他人に明け渡しているのと同じことになってしまいます。
あなたが今日電車の中で見た景色を思い出せますか。
同僚が着ていた服の色を覚えていますか。
もし思い出せないならそれは見ていなかったのと同じです。
何を選び取るかによって私たちの内面世界、ひいては人生そのものが形作られていくのです。
内面の豊かさは外面への観察の質によって決定されます。
科学的思考のプロセス

科学的思考法というと難しく聞こえるかもしれませんが、実はごく単純なことから始まります。
それは対象をごく普通に見ること、つまり観察です。
ホームズの有名なエピソードにワトソン博士に対して、ベイカー街の下宿の階段が何段あるかを尋ねるシーンがあります。
ワトソンは何百回もその階段を上り下りしているのに答えられません。
対してホームズは17段だと即答します。
これが単に見ることと観察することの違いです。
何がどうなっているのかという基礎的な性質を理解していなければ、仮説を立てることも検証可能な理論を考えることもできません。
多くの人は平易でわかりやすいことこそ、見かけによらないという真実を見落としがちです。
目の前にある当たり前の事象をまるで初めて見るかのように新鮮な目で観察し、そこからモデルを作り事実と照らし合わせる。
この地道なプロセスの繰り返しこそが天才の思考を作り上げているのです。
懐疑から始める

ホームズの思考法において最も特徴的なのはその徹底的な懐疑主義です。
あなたは自分の目や脳を信じていますか。
実は私たちの脳は信じたいものを信じ、見たいものを見るようにプログラムされています。
これを心理学では確証バイアスと呼びます。
ホームズはこの人間本来の性質に抗うために、あらゆる事象をまるで部屋の中にピンクの象がいるかのように扱います。
つまりありえない馬鹿げているという前提からスタートするのです。
普通の人が常識だと思ってスルーしてしまうことに対して、本当にそうだろうかと疑いの目を向ける。
初期値を信じるではなく疑うに設定することで、初めて隠された真実に光を当てることができるのです。
今日からあなたも常識という名のフィルターを外し、目の前の情報を一度疑ってみることから始めてみませんか。
脳という屋根裏部屋を知る

ホームズは人間の脳を屋根裏部屋に例えました。
愚か者は手当たり次第にガラクタを詰め込みますが、賢い人は本当に必要な道具だけを選んで整然と収納します。
この屋根裏部屋を整理する上で最大の敵となるのが感情です。
ホームズにとって依頼人はあくまで問題の一要素に過ぎません。
例えばとても魅力的な美人がいたとしても、感情に流されて彼女を善人と決めつけてはいけません。
実際にホームズの事件簿には天使のような顔をして子供を毒殺した女性が登場します。
逆に見た目が不快で嫌な男が、実は貧しい人々を救う慈善家であることもあります。
感情というフィルターは私たちの目を曇らせ、事実を歪めてしまいます。
あなたの屋根裏部屋は好き嫌いや偏見というガラクタで散らかっていませんか。
客観的な事実だけを棚に並べるよう意識してみましょう。
第一印象を検閲せよ

私たちは人や物事に出会った瞬間、無意識のうちにレッテルを貼ってしまいます。
これを第一印象と呼びますがホームズはこの第一印象を徹底的に検閲します。
なぜなら第一印象は過去の経験や偏見に基づいた、単なる脳のショートカットに過ぎないことが多いからです。
例えば立派なスーツを着た男性を見て仕事ができそうだと感じたとします。
しかしそれは本当に彼の能力を示しているのでしょうか。
単にスーツの仕立てが良いだけかもしれません。
ホームズならこう自問するでしょう。
当面の問題に不必要な何かが判断に影響していないか。
第一印象に影響したのは具体的に何か。
それは客観的な事実かそれとも主観的な印象か。
このように印象の出処をタグ付けし、事実と切り離す作業を行うことで私たちはバイアスから解放され、純粋な情報だけを抽出できるようになるのです。
注意力は「限られた資源」である

ここで残酷な事実をお伝えしなければなりません。
それはあなたの注意力は有限であるということです。
心理学者のダニエル・シモンズが行った有名な見えないゴリラの実験をご存知でしょうか。
バスケットボールのパスの回数を数えることに集中していると、画面の中央を横切るゴリラの着ぐるみに半数の人が気づかないという衝撃的な実験です。
これはあることに注意を払えば必然的に他のことには注意を払えなくなるということを証明しています。
私たちは世界をありのままに見ているつもりで、実はスポットライトが当たっているごく一部しか見ていないのです。
だからこそ無意識に任せるのではなく、今どこにスポットライトを当てるべきかを意志を持って決定する必要があります。
無視される情報の中にこそ真実が隠されていることが多いのですから。
観察力の4つの柱

では限られた注意力を最大限に活かし、世界を正しく観察するためにはどうすればよいのでしょうか。
ホームズの思考体系を分析するとそこには4つの柱があることがわかります。
1つ目は選択力。
2つ目は客観性。
3つ目は包括性。
そして4つ目は積極的関与です。
これらは個別のテクニックではなく、相互に補完し合うマインドセットのようなものです。
漫然と眺めるのではなくこれら4つの柱を意識して対象に向き合うことで、あなたの目は単なるカメラのレンズから情報を解析する高性能なスキャナーへと進化します。
それぞれの柱について具体的にどのように実践すればよいのか、順を追って詳しく解説していきましょう。
選択力

最初の柱は選択力です。
これは自分が何を達成したいのか目的を明確にすることを指します。
目的がない観察はただの散漫な視線に過ぎません。
例えば混雑したパーティー会場でも自分の名前が呼ばれると聞こえるカクテルパーティー効果のように、目的意識は特定の情報を脳に飛び込ませるフィルターの役割を果たします。
ただしここには落とし穴もあります。
目的をガチガチに固めすぎるとそれ以外の重要な情報が見えなくなってしまうのです。
犯人を探すという目的に囚われすぎて現場に残された重要な遺留品を見落としてはいけません。
目的はあくまでコンパスであり、レールではありません。
状況の変化に応じて手に入る情報が変われば、自分の目的も柔軟に修正していく。
そのしなやかさもまた選択力の一部なのです。
客観性

2つ目の柱は客観性です。
これは自分が見ている事実と自分自身の解釈を切り分ける技術です。
私たちは普段この2つを混同しがちです。
例えば腕を組んで貧乏ゆすりをしている人を見てあの人はイライラしていると即断してしまいます。
しかしイライラしているというのはあなたの解釈であり、事実は腕を組み貧乏ゆすりをしているという動作だけです。
もしかしたら彼は寒くて震えているだけかもしれませんし、トイレを我慢しているだけかもしれません。
客観性を鍛えるための良いトレーニングがあります。
それは目の前の状況を何も知らない他人に電話で説明するように描写することです。
形容詞や感情語を使わず、動詞と名詞を中心に事実だけを実況中継するのです。
これにより主観の罠から抜け出し、冷徹な観察者の視点を手に入れることができます。
包括性

3つ目の柱は包括性です。
観察というとどうしても視覚情報に頼りがちですが、ホームズは五感を総動員します。
現場の足音のリズム、残された食べ物の味、触れた物の質感。
これらすべてが重要な情報源です。
そして包括性において、最も重要なのが不在の観察です。
名作銀星号事件の中でホームズは犬が吠えなかったことに注目します。
番犬がいるのに吠えなかったということは、犯人は犬がよく知っている人物だという推論を導き出したのです。
私たちはあるものには注目しますが、そこに無いものにはなかなか気づきません。
本来あるはずのものが無いという違和感。
これこそが事件解決の決定的な鍵になることが多いのです。
感覚を全方位に開き、ノイズの中にある静寂すらも情報として取り込む姿勢が求められます。
積極的関与

最後の柱は積極的関与です。
これは一言で言えば面倒くさがらないということです。
人間の脳はエネルギーを節約するためにできるだけ楽な処理、つまりデフォルトの直感的な判断を選ぼうとします。
しかし観察者はあえてその楽な道を選んではいけません。
第一印象に疑問を持ち、わざわざ立ち止まって細部を確認し、仮説を立てては修正する。
この泥臭いプロセスに積極的に関与し続けること。
それが凡人と天才を分かつ境界線です。
現代人はマルチタスクで常に何かをしながら別のことをしがちですが、それでは深い観察は不可能です。
今目の前にあるものだけに全神経を集中させる。
現在という瞬間に没入する能動的な姿勢こそが隠された真実への扉を開く鍵となるのです。
想像力と「距離」

十分な観察データを集めたら次は想像力の出番です。
ホームズはデータから理論を構築しますが、そこには論理の飛躍とも言える豊かな想像力が必要です。
思考が煮詰まったとき、ホームズはよくバイオリンを弾いたり化学実験に没頭したりします。
これは対象から距離を取るためです。
想像力を活性化させる鍵は距離にあります。
物理的に場所を変える空間的距離。
時間を置いて考える時間的距離。
もし自分が犯人だったらどうするかと考える仮説的距離。
対象から一歩下がることで細部に囚われていた視点が解放され、全体像が見えてきます。
証拠から結論へと一直線に進むのではなく、一度寄り道をすることで意外な組み合わせや新しい可能性が生まれるのです。
あなたも難問にぶつかったら散歩に出かけてみてはいかがでしょうか。
不確実性への耐性

私たちは本能的に不確実な状態を嫌います。
答えが出ない宙ぶらりんな状態は不安で居心地が悪いからです。
そのため早急に白黒つけようとして拙速な結論に飛びついてしまいがちです。
しかし偉大な思想家や探偵たちはこの不確実さを乗り越える力を持っています。
詩人のキーツはこれをネガティブ・ケイパビリティと呼びました。
事実や理由をせっかちに求めず不確実さや不思議さ、懐疑の中に留まり続ける能力のことです。
まだ犯人がわからない、理論が完成しないという不安な状態に耐え、安易な答えに逃げずにオープンな態度を持ち続けること。
失敗への恐怖を捨て、創造性の敵である早期の完結欲求に打ち勝つことが、真の叡智へと至る唯一の道なのです。
事実に基づく推理

ホームズの有名なセリフにこんな言葉があります。
ありそうもないことは不可能なことではない。
私たちは推理をするとき、直感的に辻褄が合うストーリーや過去の経験則に当てはまるパターンを見つけると、そこで満足して思考を停止してしまいがちです。
これはいわゆるもっともらしい嘘に騙されている状態です。
ホームズは違います。
自然に受け入れられる見方を超えてさらに深く掘り下げます。
他の可能性は絶対にないかと執拗に問いかけ、ありえないと思われることでも事実がそれを示しているなら受け入れます。
事実に基づく推理とは安易な満足との戦いです。
パズルのピースがはまったように見えても、それが本当に正しい絵を描いているのか最後まで疑い続ける粘り強さが求められるのです。
【おすすめ本】シャーロック・ホームズの思考術
本の概要
あなたは今、自分の可能性に気づいていないだけかもしれません。
シャーロック・ホームズの驚異的な推理力は、特別な才能ではなく、脳の使い方次第で誰もが身につけられるスキルだったのです。
本書は、ホームズの名場面を最新の心理学と神経科学で解き明かし、観察力・注意力・想像力を飛躍的に高める具体的な方法を教えてくれます。
本の口コミ

身につけたい思考がそのまま載っていたので大変良く思いました。ありがとう。

シャーロックホームズを通じて、生き方を考えさせられる本でした。学の少ない私には、途中読み返したりして難しい表現もありましたが、読んで為になる本でした。
最もパワフルな頭脳とは

さてここまでホームズの思考技術を見てきましたがその根底にあるのは何でしょうか。
それは平静な頭脳です。
感情の波に飲み込まれず、注意を怠らず、自分自身の思考状態を常に客観的にモニタリングできるマインドフルな状態。
これこそが最強の武器です。
現代社会はノイズに溢れ、私たちの屋根裏部屋はすぐに散らかってしまいます。
だからこそ意識的にメンテナンスを行い、不要なものを捨て、必要なものだけを磨き上げる習慣が必要です。
マルチタスクをやめ、一つ一つの瞬間に目的を持って向き合うこと。
そうすればあなたもきっと霧の中に隠された真実の光を見出すことができるでしょう。
今回のお話があなたの屋根裏部屋を整えるきっかけになれば幸いです。
